LOG IN

エイテウアラオト -エイテ- 第4話「コウ・アオギリとケルベロス3姉妹 結ばれゆく想い」

by 寺口 巧(てらぐち たくみ)-カウラーキー(kouraku)with新生クラヴァー&新生terataku

コウは言われるがまま、自身の聖精(セレア)となった三人のケルベロスの少女と共に公園から移動し、自分の家の前にいた。
「えっと……ここが私の家。入るね。……ただいま~」
 扉を開き、彼女らを中に招き入れる。
「邪魔するぞ」
「お邪魔します!」
「失礼致しますわ~♪」
 三人の聖精(セレア)も一言ずつ挨拶をして、コウの家の扉をくぐる。
「何にもないけれど、ゆっくりしてね」
 コウは穏やかに微笑みながら、奥に入る。
 ケルベロスの少女たちはそれに続いた。

「おうコウ。おかえり」
「おかえりなさい、コウちゃん」
 玄関を通り抜けて居間に入ると、コウの父と母が迎えてくれた。
「ただいま、父さん、母さん」
 コウは柔らかく返事をし、すこし自信なさそうに言葉を続ける。
「あの……」
「分かってる」
「心配しないで、コウちゃん」
 息子の声を、両親が頷きながら制した。
「え? 私、まだ何も……」
「コウ」
 戸惑うコウに、父が厳かに言い直す。
「は、はい?」
「案ずるな。うちは家族が何人増えても大歓迎だからな」
「そうそう」
 母も大きく頷いた。
「――は?」
 コウは白い石と化し、ピシッ、となにかが割れる音がする。
「お前も年頃だもんなあ。まさか一度に3人も彼女をつくるとは思わなかったが、やはり俺の子供だ」
「8年前はどうなることかと思っていたけれど……お母さん感激だわ~」
「え……? ――!! あ、あ、あ、」
 脱力すらできない親の物言いに固まっていたコウだったが、突如背後から殺気を感じてガクガクと震えながら振り返
「オイてめえ、どういうことだ」
「ぎゃふん!」
 ――る間もなくガウナにボロ雑巾のように蹴り飛ばされて、コウは天井でバウンドして床にめり込む。
「お兄ちゃんが死んだ! この人でなし!」
「すみませんコウ様……うちのガウナちゃんが……」
「オレたちはお前の聖精(セレア)であって彼女サマなんかじゃねーんだよ!」
「ず、ずびばぜ……」
「おぉ、この子たちがコウの彼女――」
「聖精(セ・レ・ア)だ――ッ!」
「まあ、元気のいい娘さんたちだこと」
「どうなってんだお前の親――ッ!」
「ず、ずびばぜ……」

 ~

「……で、こっちの事情を説明したり、「そんなことはどうでもいいから」とばっさり斬られて夫婦の惚気話をとっくり3時間ほど聞かされて今に至るわけだが……」
 そんなこんながあり、居間から移ってコウの自室。時刻はすでに夕暮れである。
 ガウナが行儀悪く主人のベッドに胡坐をかいて座し、イライラと唸った。怒りでか照れでか、少しだけ頬が赤い。
「ご、ごめんよみんな……仲がいいとは想ってたけど、私もまさかこんなことになるなんて……」
 コウはなぜか床に這いつくばり、土下座の姿勢で自分の聖精たちへ謝っている。
「いいじゃないですか、ご家庭円満で。お夕飯ご馳走様でした」
 マーレが微笑んで慰める。
「そうそう、気にしたら負けだよ。お兄ちゃんも、ガウ姉も。それにいいお母さんとお父さんでよかった。話も楽しかったし」
 クェルドがニコニコと部屋の中を踊るように舞った。
「初対面の、これでも女どもに、する話じゃねーだろうが……」
 ガウナは不機嫌だが、一旦気を収める。
「……これからどうしよう」
 コウは座り直し、改めて、自身の聖精となってくれた3人のケルベロスの娘に向き合う。
「ん~、とりあえず我が家とつなぐ?」
「我が家?」
 普段は姉たちの補助的な立ち位置ばかりだったクェルドが、珍しく会話の主導権を握った。
 コウは素直に疑問を口にする。
「うん、お兄ちゃんがボラジャ・シュバインから譲られた、私たちの召喚石があるじゃない?」
「うん、これ?」
 コウは彼女らをこの世界に召喚した、ボラジャから譲り渡された不思議な石を取り出し、部屋の中央に置いた。
「そうそう。ちょっと貸してちょうだいね……えいっ」
「おわっ」
 クェルドが両手の平を近づけ、何やら目には見えない力を石にこめると、それは彼女らを喚んだときと同じように輝き始める。
「……えっ」
「出でよ、我が家!」
 石が放った輝きは、コウの部屋の壁の一点に向かい、クェルドが力を注ぐのに呼応して、そこに渦巻く光の穴をあけた。
「……あの」
 その光の穴は拡大し、やがて壁一面を覆うそこそこ大きな時空の切れ目と化す。
「あ……あ……あわわ……」
「これでよし」
「よくやった、クェルド」
「よかった~。これでひとまず補給面は問題なさそうですね~」
 ガウナとマーレも同調する。
「えへん。……あれ? お兄ちゃん、どうしたの? お顔が真っ青よ?」
「……ぱくぱく」
 クェルドが可愛らしく胸を張ったが、コウは雪原生物のように青と白の雪ダルマのようになっていた。魚のように虚無的に口を開け閉めしている。
「……こ」
「こ?」
 クェルドが不思議そうにコウを覗きこんだ。
「……こ、ここ、善良で平凡なゼクス市民の、一家庭……」
「あ~」
 クェルドは眉をひそめた。
「……う、うちの、……何の変哲もない、愛する私の部屋が……キミの「えいっ☆」のお気軽な一手間で……あっという間に小年漫画で読んだような異世界空間と同化して……」
 ケルベロス三姉妹の末っ子は、察してポン、と、まるで競争社会で働く上司のような肩たたきを、そっと主人にやってのけてみせる。
「お兄ちゃん、ごめんなさい……これはきっと、聖精使い(セレアパステス)の逃れられぬ宿命なのよ。受け容れてちょうだい」
「……ぷしゅう……」
「ふっ……平凡人の人生、お兄ちゃん、今までお疲れ様……。さぁ、ここからはいよいよ、夢にまで見た(地獄の)"聖精と共に歩むもの(セレアパステス)"ライフの始まりよ……」
 クェルドが一度おっさんのような渋い顔をコウにしてみせ、次いでニヤリと意地悪く微笑みかける。
「今さらっと地獄って言ったよね……ケルベロスだけにね……。もしかして……そうだね、こんなものはまだ序の口だよね……そうだよね……。ボラジャさんとアルビーみたいに、もっとすごいことも、きっとたくさんあるもんね……そうだよね……」
「ご主人サマ、口から魂が出てる」
「まあ大変、地獄の番犬の名に懸けて連れ戻さないと」
 ガウナは半ば呆れ気味に、マーレはどこか楽しそうに、それぞれ魂魄の抜けた主人を自分たちなりに思いやった。
「あ、でも私たち、普段はお兄ちゃんとずっと一緒にいるから!」
「……?」
 コウに生気が戻る。
「え……あの……キミたちの家とつながったんだし、そっちで生活……できるんじゃ」
「……」
 ガウナが少し顔を赤らめて俯いた。
「ご主人様、ちょっとすみません~♪」
「え――がふっ……! ~~~」
 瞬間、鋭い手刀がみぞ落ちに入り、コウは気を失う。

 ――朝日が昇り目が覚めたとき、コウは3姉妹が自分の寝具を持ち込んで一緒に寝ていたことを知り、もういろんな意味でなにかを諦めた。


寺口 巧(てらぐち たくみ)-カウラーキー(kouraku)with新生クラヴァー&新生terataku
OTHER SNAPS